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第ー回 文化と伝統の城端線
第ニ回 古代ロマンと海物語の氷見線
第三回 山間の情緒息づく高山線
第四回 地鉄と連携、大自然生かして(新黒部)
第五回 本物文化をつなぐ万葉線(高岡)
第六回 路面電車網で賑わい復活(富山)
第七回 並行在来線活性化へ(北陸線沿線自治体)

富山きたものがたり

鉄ちゃん王国
 




県花・チューリップが咲き誇る中を走る北陸本線(滑川市三ケ)

北陸新幹線が金沢まで開業すると、北陸本線は並行在来線として第三セクター化され、特急などの優等列車は走らなくなる。つまり、東京方面へ向かう際に、越後湯沢や長岡への連絡に使われている特急「はくたか」「北越」がなくなる。東京直通の特急「北陸」や急行「能登」もそうだ。

それだけではない。関西方面への優等列車も大阪−金沢間のみの運行となる可能性が高い。これに対し、「富山から新幹線で金沢まで行ってサンダーバードに乗り換えるのは不便だ」として、富山までの乗り入れを希望する声が多い。ただ、これまでの既設新幹線地域の状況からすると、難しいだろう。

こうした状況を踏まえ、並行在来線の第三セクター化にあたっては、富山県内区間にとどまらず直江津から金沢までを視野に入れた構想をするべきなのは当然だ。

自治体の発想と行動は通常、行政区域の枠を出ないが、今こそ、新潟、富山、石川県が真剣に話し合い、連携すべきだろう。つまりお題目ではなく、本格的な広域連携である。その上で、それぞれの県内区間におけるローカル電車の利便性を競えばいい。

並行在来線の経営をする第三セクターは、どこも経営が苦しい。もともと収支の悪いローカル線を引き継ぐのだから当然のことである。そこで、いかに利便性を高めて乗客増を図るかがポイントになる。それには、従来以上に乗客の目線で発想することが求められるのは言うまでもない。新駅設置で駅間距離を短縮しようという提言が出されているが、ぜひ実現してもらいたい。

車の運転が面倒だとか、安全性、環境問題などから公共交通を利用したいと考えている潜在的な需要は多い。高齢化に伴って、今後はさらに車の運転が出来なくなる人が増えてくるのは目に見えている。それでも列車を利用しないのは、自宅から駅まで遠かったり、駅に駐車場がないからという人は意外に多い。

新駅設置の提言をしているのは、公共交通問題に関心を寄せる県の職員で構成する富山県交通政策研究会である。提言によると新設駅(仮称)は6駅。東から言えば、持光寺(黒部−魚津間)、魚津中央(魚津−東滑川間)、西滑川(滑川−水橋)、鍋田(東富山−富山間)、願海寺(呉羽−小杉間)、野村(高岡−大門間)だ。現行の駅と駅の間に位置し、周辺人口の割には鉄道の利便性を享受しにくい地点とも言える。実際に、これらの駅が出来れば利便性が格段に向上するのは目に見えている。

縄文時代から全国に広がったヒスイの産地・宮崎海岸

この北陸線にLRTを走らせるアイデアも浮上している。その場合の課題の一つは1日に20本ほど走っているJR貨物の取り扱いだ。もう一つは大阪−青森間の寝台特急「日本海」、大阪−札幌間の「トワイライトエクスプレス」がどうなるかである。将来的に北陸線をLRT化しようとした場合、速度の違いなどで若干のネックになるだろうが、本数が少ないので共存が不可能とは言えない。あとは現在の北陸線が20000ボルトで送電していることと、ポートラムは将来の乗り入れを考えたのか、市電と同じ600ボルトであるという違いはある。これも克服される技術的な問題に過ぎない。

さて、鉄道そのものはこれぐらいにして、北陸線沿線のまちづくりや観光をどう考えていくのかを検討してみたい。これまでに述べた富山、高岡、黒部、魚津を除いて、一言ずつだが郷土を愛する立場から書いてみたい。

まず朝日町。宮崎海岸はヒスイが採れるということで、ヒスイ海岸として売り出している。平日でも海岸を歩いて探している人を見かけるから、宝探しのようなロマンがあるということだろう。ただ、どれがヒスイか、素人には分からない。海岸にヒスイの写真を載せた看板も出来て少しは親切になったが、糸魚川のフォッサマグナミュージアムや北陸自動車道親不知ピアパークにあるヒスイの展示館などに比べると、基本的にヒスイ海岸という名称だけである。

ヒスイ海岸近くを走る北陸線の特急

この地域のヒスイ加工品は縄文、弥生、古墳時代を通じて、全国に広がっていた。いわば当時のハイテク産業の基地であったことを、もっと全国にPRすべきではないか。特に宮崎海岸のヒスイは海から来るという。こうした不思議の海からの贈り物をもっと効果的に訴えることで、新幹線効果をより一層発揮できるのではないか。

入善町は、国道8号を通るだけでは分からないが、駅前に立派な商店街が連なる。かつての宿場町の名残であろうか。なにか他県に来たような感じさえ受ける。山手にある舟見は風情のある町で、扇状地を眼下に見渡せる。富山市からは遠いが、逆に心豊かな「ふるさと」を感じさせる。それがまちづくりのキーワードの一つだろう。

滑川市高月町に残る街道の並木

滑川市は、ホタルイカが全国ブランドである。例年、シーズン入りすると全国ネットのテレビ各局が特集番組で紹介する。ただ、季節限定ものだけに通年で人を呼ぶというのは難しい。淡い光つながりで、ホタルの里や星空のきれいな町を標榜するが、どれも観光客を誘致するインパクトはない。

もともとは宿場町であり、北前船の寄港地でもあった。芭蕉も奥の細道で滑川に一泊している。旧北陸道沿いに1本だけ松の木が残り、江戸時代の風情を残しているが、ここも足を止める人はいない。電線だらけで写真にもならない。ほかに、街道沿いにわずかに格子戸の家並みが残る。こうしたものをもっと生かす方法はないのだろうか。

射水市は、合併により誕生したため市域が広い。北陸線沿いは旧小杉町を中心とし、富山・高岡の中間にあることから、新幹線富山駅にも新高岡駅にも行きやすい。将来的に大阪まで新幹線がつながれば、行き先によって利用する駅が決まるのかもしれない。旧小杉町は学園都市として、鉄道と連携した公共交通の発展がさらに求められよう。人口増加地域でもあり、交通網の整備でさらに利便性が高まるだろう。

桜町JOMONパーク出土品展示室資料館

小矢部市は、石動町と砺中町(津沢)の合併で二つの核が存在したままになっている。北陸道と能越自動車道が交差する結節点(クロスランド)として売り出しているが、単にクロスするだけでは何もならない。

ここは桜町遺跡を見るまでもなく、縄文時代から高度な文明が栄え、長い間にわたって現在の砺波地方の中心であったという。もちろん、この地域が住みやすかったからに違いない。そうした事実や源平の倶利伽羅合戦など全国的に知られる要素を持っている。

だが、桜町遺跡にしても埋め戻されて小さな看板があるだけだから、市外から来た人は気付かない。展示館構想はあるが、今のところ小さな平屋の建物に申し訳程度に出土物が陳列してあるだけだ。今は古代史ブームであり、ファンは多い。高齢化の時代はさらにこうした文化を求める人が多くなる。圧倒的な迫力で「本物を見せる」ことが必要だろう。

埋め戻されて、小さな看板だけがある桜町遺跡発掘現場

今、地球温暖化を防ぐために車社会からの脱皮が喫緊の課題になっている。その意味で、鉄軌道は21世紀の移動手段として再び注目を集めているのだ。使い勝手のよい公共交通は住みやすいまちの条件であり、「旅の人」にとっても便利で素敵な町と映るに違いない。

「鉄道王国・とやま」をつくった先人たちの遺産を活かしながら、再び鉄軌道を動脈にしたまちづくりに取り組むことで、日本のモデル、いや世界に発信できる自慢のふるさとになると言える。

余談だが、現在の北陸新幹線は長野までしか開通していないため、長野新幹線と呼ばれている。「北陸へ行けるものと勘違いされては困る」というものだが、ネーミング当初は「計画そのものが長野止まりになってしまう」という危機感から反対の声も多かった。いずれにしろ、金沢まで開業すれば長野新幹線という名称は終わることになるだろう。

すると、長野以北への延伸で、飯山の次に上越(仮称)駅が出来る。新潟へ行くのが上越新幹線で、上越を通るのが北陸新幹線ということになる。本質論とは関係ないのだが、これも政治に翻弄された新幹線の象徴とも言える。

紆余曲折を経た北陸新幹線だが、いよいよ開業へのカウントダウンが始まる。そして大阪への延伸計画も本格化するだろう。こうした新幹線の恩恵を真に享受するためにも、それぞれの自治体による大胆で緻密なまちづくりを期待したい。それには、この連載で何度も書いたが、文化とか芸術を理解し独自性を発揮できる頭脳が必要だ。

何も難しいことではない。自分たちを県外の人間に置き換えて、「その町を訪れてみたいかどうか―」が基準である。井の中の蛙のような身びいきではなく、グローバルな視点でとらえてみることだ。そうすれば20世紀型の大規模開発ではなく、心を豊かにするまちづくりにたどり着くはずだ。(おわり)

 

第ー回 : 文化と伝統の城端線
第ニ回 : 古代ロマンと海物語の氷見線
第三回 : 山間の情緒息づく高山線
第四回 : 地鉄と連携、大自然生かして(新黒部)
第五回 : 本物文化をつなぐ万葉線(高岡)
第六回 : 路面電車網で賑わい復活(富山)
第七回 : 並行在来線活性化へ(北陸線沿線自治体)

 

運営:未来観光戦略会議