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第ー回 文化と伝統の城端線
第ニ回 古代ロマンと海物語の氷見線
第三回 山間の情緒息づく高山線
第四回 地鉄と連携、大自然生かして(新黒部)
第五回 本物文化をつなぐ万葉線(高岡)
第六回 路面電車網で賑わい復活(富山)
第七回 並行在来線活性化へ(北陸線沿線自治体)

富山きたものがたり

鉄ちゃん王国



宇奈月温泉を出発する富山地鉄の電車

北陸新幹線が東京から走ってくると、県内最初の駅が新黒部(仮称)となる。新潟県から青海トンネル(4300メートル)、新親不知トンネル(7334メートル)、さらには富山県の朝日トンネル(7549メートル)と相次ぐため、安全上からも明かり区間(トンネルでない区間)に出たところで駅が必要なのである。

活性化へ大きなチャンスを迎える宇奈月温泉街

しかし、県内3駅のなかで人口が最も少ない地域にあり、新幹線の開通を新川地方の発展にどう生かしていくか、難しい問題がある。まず、新黒部駅を利用する県民のエリアはかなり限られている。となると、いかに多くの観光客を呼び込むための工夫をするかにかかっていると言える。当面は金沢までの暫定開業のため関西方面からの誘客が見込めず、東京方面のみの連絡となることもネックだ。

新黒部駅が建設される場所は田んぼの中。接続する鉄道は地鉄本線であり、ここに新駅を設置して黒部市街地、魚津、および宇奈月温泉へアクセスする。

新幹線を見越して、この地域が成し遂げなければならない最大の課題は宇奈月温泉の活性化ではないか。どこにでもあるような温泉であれば、わざわざ宇奈月温泉に来る必要性は薄い。自然と一体化したイメージをさらに構築して、それに沿った戦略が必要だ。

同時に、地鉄のLRT化を考えることが必要だろう。乗り降りが便利で駅間距離の短い近未来型電車・LRV(ライトレール・ビークル)を走らせる。つまり、新幹線を降りたらLRTが走っており、それで宇奈月温泉へ行き、一泊した翌日は黒部峡谷鉄道のトロッコ電車にも乗れるということであれば、この地域ならではの貴重な体験を提供できる。

秘境を走るトロッコ電車・黒部峡谷鉄道

黒部の谷は世界に誇れる大峡谷である。そんな秘境を気軽に訪れることが出来るのだから、東アジアをはじめとする海外からの顧客も視野に入れて、活発な売り込みを展開すべきだろう。立山には台湾、韓国からの観光客が多いが、宇奈月温泉や黒部峡谷にはまだまだ少ない。

難問なのは、黒部峡谷鉄道の輸送キャパシティに限界があるということ。もともとハイシーズンは込み合う。さらに、終点の欅平まで行っても、見どころがないとの不評もある。往復の車窓に広がる大自然に満足できる客ならそれでもいいが、欅平に黒部峡谷を体験・紹介するビジターセンター的なものか、ひなびた山の温泉施設が必要かもしれない。もちろん、中途半端なものならかえってマイナスである。自然を壊さないで視覚、聴覚、触覚にダイレクトに訴えるものが必要だ。

それは、ふもとの宇奈月温泉にも言える。温泉街には関西電力の黒部川電気記念館に黒部峡谷のジオラマなどが設置してあるが、どれだけの観光客が知っているのだろう。もっと多くの人に理解してもらうためには、絶壁に掘られた旧日電歩道を温泉街で再現したり、滝をつくることはできないものか。要は、疑似体験できる施設がほしいのである。観光客にとって秘境に触れた体験はほかでは得られない強い印象として心に残り、旅行から帰って多くの人に語るに違いない。

北陸新幹線新黒部駅近くの高架橋。
ほぼ完成している

次は旧黒部市内の問題だ。合併によって誕生した経緯もあり、三日市、石田、生地の3地区に核が分かれている。うち三日市と石田に地鉄本線が乗り入れ、生地にJRとなっている。これらに加え、新幹線駅という第四の核が出来ることになる。

地鉄本線は在来線(北陸線)の黒部駅には接続していない。地鉄と在来線が乗り換え可能なのは、富山、魚津、滑川なのである。そこで、新黒部駅を利用する県民を少しでも多く確保する方法がいくつか考えられる。一つ目は黒部駅から約300メートル北に離れた地鉄との交差地点をどう使うかだ。

鉄ちゃんコラムでも書いたが、ここはJR線の上を地鉄本線が高架で走る構造になっている。地鉄とすれば、ここで在来線と結んでしまうと、自社の乗客を奪われる恐れもあって難しいのだろうが、並行在来線を運行する第三セクターと連携した百年先を考えた戦略こそ必要だろう。

もう一つの方法として議論されているのが、地鉄本線「黒部支線」の復活案である。この路線は地鉄の前身、黒部鉄道の時代の名残で電鉄石田と電鉄三日市(現電鉄黒部)を結んでいたもので、途中、国鉄黒部駅と連絡していた。1969年8月に廃止されたが、それを復活すれば北陸新幹線新黒部駅と在来線黒部駅がつながるというわけだ。ただ、いったん廃止した線路を復活させるのは多大な費用が掛かることなどから、よほどの決断がいるだろう。

いずれにしろ、鉄軌道は結んでこそ効果がある。ぜひとも効果的な接続方法を編み出してほしいものだ。

JR線と交差する地鉄本線。
現在は接続していない=黒部市

一方、これまで新川の中心となっていた魚津市も新黒部駅の誕生で、難しい舵取りを迫られる。かつて、新幹線がフル規格でなくスーパー特急方式で進められて魚津駅に乗り入れ−と言われたときは新幹線への関心も高かったが、フル規格で新黒部駅設置に確定してからは、あまり動きがない。しかし、在来線と地鉄本線の利便性を高めることに協力して、新幹線の恩恵を市の活性化に結びつけることが重要ではないか。

たとえば、魚津独自の伝統と、海を生かした観光をさらに充実させる。「しんきろう」は、簡単に見えないから観光の材料になりにくいのではなく、極北のオーロラのように見えにくいからこそブランドになるという考え方もある。「不思議の海」をどう生かすかが課題だ。海岸に「しんきろう展望台」を造って大型双眼鏡、望遠鏡をずらりと配置するなど地道な展開も必要だろう。

魚津水族館も長い歴史を誇るが、いまひとつ活気に欠ける。現在、沖縄をはじめ国内各地で水族館を癒しの空間ととらえてブームになっているが、そうした波に乗り切れていない。もちろん、施設が中途半端なスケールであることもある。

動物を扱う点で言えば、旭川市の旭山動物園が閉園の危機を乗り越えて、生態展示で大ブームとなっている例がある。旭川市は人口38万人と規模は大きいが、必要なのは柔軟な発想と、それを生かす行政の理解力であることを示している。ぜひとも、見習ってほしいものだ。

知恵と実行力次第で、人口の少ない地域でも新幹線効果を存分に受けることが可能だと言っていい。それには、文化的・芸術的な発想が出来る人材がいて、そうした発想を大事にする行政風土が欠かせないだろう。

 

第ー回 : 文化と伝統の城端線
第ニ回 : 古代ロマンと海物語の氷見線
第三回 : 山間の情緒息づく高山線
第四回 : 地鉄と連携、大自然生かして(新黒部)
第五回 : 本物文化をつなぐ万葉線(高岡)
第六回 : 路面電車網で賑わい復活(富山)
第七回 : 並行在来線活性化へ(北陸線沿線自治体)

 

運営:未来観光戦略会議