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第ー回 文化と伝統の城端線
第ニ回 古代ロマンと海物語の氷見線
第三回 山間の情緒息づく高山線
第四回 地鉄と連携、大自然生かして(新黒部)
第五回 本物文化をつなぐ万葉線(高岡)
第六回 路面電車網で賑わい復活(富山)
第七回 並行在来線活性化へ(北陸線沿線自治体)

富山きたものがたり

鉄ちゃん王国



高岡駅前から片原町へ向かう万葉線アイトラム

北陸新幹線の開通によって、街として最も大きな分岐点を迎えるのが高岡だろう。それは新幹線駅が現駅に併設という形ではなく、南へ1.5キロ地点に新設されるということに尽きる。これまでの経験則からしても、岐阜羽島のように分離駅となったところは、まちづくりに支障をきたしている。そんな厳しい条件下で発展につなげるためには、20世紀型の発想を全く変えないといけないのかもしれない。

つまり、全国どこにでもある都市と同じようなものをイメージしたまちづくりの発想ではダメだということだ。新駅や現駅、及びその周辺をどう整備するか、さらに両駅間の1.5キロをどうすべきかを考えた場合、「徹底して高岡らしさを打ち出す」しかないのではないか。金太郎飴のような都市では誰も感動しないのだから。

たとえば、新駅の周辺に大規模駐車場を設置する計画がある。利用者の利便性を確保し、県西部全域から能登に至るまでの乗客を集めるのに不可欠という発想だ。それで駅周辺に「にぎわい」が生まれるのならいいが、果たしてどうだろう。

全国的に地方都市は、街中の一等地を駐車場が占めることで、町そのものの活力が失われている。駐車場は郊外店に客を取られないために必要という。しかし、郊外店が得意とする土俵で勝負すれば、中心商店街は利便性で勝てるわけがない。本来、街そのものの魅力で勝負するしかないのに、である。駅は空港と違い、街そのものである。その地域にどうやってにぎわいを確保するかが肝心だ。

新幹線駅に大規模駐車場を設置する考え方は、新黒部なら理解が出来る。だが、高岡の都市規模で土地を有効利用するという観点からすると、「もったいない」感じがしてならないのだ。むしろ、「東京など県外から多くの人々に来てもらう」という発想に切り替えたほうが、将来的に発展性があるのではないだろうか。

人を呼び込むための素材はいくつもある。たとえば、新駅と現駅の間には日本一の禅宗伽藍、国宝・瑞龍寺がある。これをもっと生かすことだ。門前には県外の観光バスがよく停まっている。だが、同じ富山県でも県東部の人にとっては名前を聞いたことがあるぐらいで、訪れたことのない人は多い。瑞龍寺が単体で存在していて、周辺を巻き込んだ観光地としてとらえられていないからでもある。それが、実にもったいない。

瑞龍寺と前田墓所を一直線で結ぶ八丁道

このお寺の周辺には畑もあり、まるで奈良の郊外に来たかのような雰囲気を漂わせる。実際に、カメラを持って歩いていると、学校帰りの小学生の女の子が「こんにちは」と挨拶してくれた。観光客と思って声を掛けてきたのだろう。瑞龍寺も素晴らしいが、こうした小さい子にもホスピタリティーの精神があって、心なごませられる。それが町の価値を何倍にも上げているのだ。

瑞龍寺正面から一直線に延びる八丁道は名前の通り、約800メートルある。整備された道路は両端がそれぞれ1車線の車道で、真ん中が歩道となっている。そこには松の木や灯篭が置かれており、素晴らしいプロムナードだ。県内でこれだけの道路はほかにはない。いや、県外でも珍しいだろう。

城主の墓としては全国一。
加賀藩2代藩主・前田利長公の墓所

その八丁道を歩くこと約10分。前田墓所に着く。加賀藩二代藩主・前田利長公のお墓だが、城主の墓所としては日本最大であり、その石組みの素晴らしさは他に例を見ないと専門家は言う。だが、現状はその価値があまり知られていないようだ。墓域は1万平方メートルあるが、近所の人の散歩コースか小中学生の通学路程度にしかなっていない。これまた、もったいない話である。

ほかにも市内には、浄土真宗本願寺派の勝興寺(伏木古国府)、臨済宗国泰寺派の本山・国泰寺(太田)などの名刹もあるが、こうした有名なお寺や高岡大仏だけでなく、町並みの素晴らしいところが高岡の特徴だ。格子戸のある家々が連なる金屋町、土蔵群の山町筋なども、その伝統ある町並みが今に残っていることに驚かされるばかりだ。

ただ、こうした町並みがすべて昔ながらの姿を留めているかというと、そうでもない。普通の町家もかなりある。これが町並み整備・保存の難しいところである。とはいえ、徐々に整備していくことで真に高岡らしい町が出来上がることは間違いない。それこそ全国に誇れるし、大きな観光の要素となる。人が感動するのは、その町独特の文化に彩られた重みを感じたときであることをもっと理解すべきだろう。

坂下町商店街から望む高岡大仏。
電線が邪魔をしている

町並み整備で、比較的簡単に出来るものもある。それは坂下町商店街から見える大仏である。商店街がごくわずかにカーブしているため、徐々に大仏が姿を現してくるロケーションは素晴らしい。それこそ、奈良や鎌倉の大仏にはない特徴だ。ところが、その大仏を拝もうにも電線だらけなのである。大仏近辺は整備されているのだが、エントランスにまで気を遣えば、さらによくなるのは言うまでもない。

さて、大きな課題は新高岡駅と現高岡駅をどう融合するかであろう。城端線の稿でも述べたが、新高岡駅には城端線の新駅を設置してアクセス線とし、それをLRT化するのが有効だ。つまり、城端線を万葉線と一体化するということである。それにより、新幹線駅から高岡を通って氷見まで、また旧新湊まで行ける。

まちづくりとしては、現駅周辺は伝統文化が息づく町並みをさらに熟成させ、新駅周辺は近代的な町並みゾーンと、五箇山へ続くふるさとゾーンの二つの性格を区分けして構成することも面白いだろう。県外客にとってそれぞれの魅力を感じてもらえる仕組みだ。

土蔵造りの家が建ち並ぶ山町筋

古い歴史を持つ万葉線にアイトラムが登場したことで、町の雰囲気が大きく変わった。真っ赤な車体の2両編成の電車が町の中心部を走るときは従来の日本のイメージを超えた不思議な空間をつくる。まさに先進的な大都会を思わせるのだ。そして郊外へ出れば、鉄道模型の世界のようでもある。

旧新湊市(射水市)を生かすのも、まさにこの万葉線であろう。新幹線への貴重なアクセス線だ。まちづくりとしては、鉄ちゃんコラムでも触れたが、市内を流れる内川の活用を本格的に検討することが求められる。富山県内の川が山岳地帯の南側から富山湾のある北に向かって速い流れであるのに対し、内川は東西に流れて富山新港に注ぐという特殊な形態を持つ。

格子戸のある家々が特徴の金屋町

両川岸には漁船やプレジャーボートが係留されていて、磨きようによっては風情ある観光地となる要素を持っている。つまり、一見すると運河のようにも見えるのだ。小樽の運河が観光名所となっていることを考えても、これに匹敵するような素材である。

いずれにしろ、これからのまちづくりは本物志向でないと、見向きはされないだろう。芸術的な視点で、優れた伝統を生かすことを考えてほしいものだ。

 

第ー回 : 文化と伝統の城端線
第ニ回 : 古代ロマンと海物語の氷見線
第三回 : 山間の情緒息づく高山線
第四回 : 地鉄と連携、大自然生かして(新黒部)
第五回 : 本物文化をつなぐ万葉線(高岡)
第六回 : 路面電車網で賑わい復活(富山)
第七回 : 並行在来線活性化へ(北陸線沿線自治体)

 

運営:未来観光戦略会議