ライトレールとロングテール
日本政策投資銀行 佐藤 淳
先日富山ライトレールに乗る機会があった。噂に違わぬ素晴らしい車両。数年前まで住んでいた南九州の路面に一部導入されたLRT車両は、全長の約1/2が運転席という感慨深いものだったが、さすがに富山の車両は広い。しかも、全ての車両が欧州を彷彿とするLRTである。
ここまで徹底すると、本物志向のコアユーザーが集まる。通称「てっちゃん」。鉄道・軌道のプロ集団である。どういうわけか男性が多いようだ。日本にどれだけ存在するのか、確たる統計はないが、身近な職場で探る限り、何パーセントではなく、何割のオーダーで存在するようである。
富山ライトレールの広い車両にもプロ集団はいた。乗車したのは、すいているので半額となる時間帯。十数人の乗客のなか、数名は明らかに「てっちゃん」とみた。さすがにプロ集団である。駅に停車中の、あるいは走行中の車両を前後左右から撮影するなど、研究に余念がない。富山はコアユーザーの聖地となっていた。
さて、ロングテールというものを御存知だろうか。ライトレールに似ているが、乗り物ではなく、話題のマーケティング用語である。ランキング順に販売額をプロットすると、右肩下がりの曲線になる。するとニッチ商品は長い尾(ロングテール)のようにみえる。今まではベストセラーが経済の主力だった。ところがネット販売では品揃えに限界がない。このため裾野が長いニッチ部門がメジャーを凌駕するに至っている。
そういえば、地方圏でもニッチなものが注目されている気がする。大型温泉旅館の時代は去って、隠れ家の宿だったり、地域限定の食品や食材だったり。ニッチ力では富山は良い線いっている。認知度の逆数だったりするが、ロングテールの時代には問題ない。ライトレールに人知れず集う「てっちゃん」。古酒のストックでは日本有数と思われる岩瀬の酒屋。万葉線では内川・漁師町の寿司。さらに富山ブラック(ラーメンです)。
本物が解る人は多くない。本物志向はニッチの時代でもある。リアルな世界のブロードバンドは来たる新幹線であろう。これから観光はますますニッチ化するのではないか。ライトレールが富山のロングテール市場を拓くきっかけとなることを期待したい。