新幹線の歩みと展望
年間2億8千万人(1日平均75万人)以上の乗客を高速で運んできた日本の交通の大動脈・新幹線。
1964年10月開業以来、40年以上の歴史は技術開発の歴史でもある。比類の無い斬新な設計思想で世界初、時速200K超えるスピードへの挑戦であり、先頭車両の流線形デザインは日本の戦闘機からヒントを得たものであった。そして大事故にもつながりかねない高速回転時における蛇行動と呼ばれる車輪の振動を克服し、軽量化した「のぞみ」による第2のスピード革命も達成した。又、在来線に無かった独自の安全対策も開発された。
しかし、2004年10月23日、新潟中越地震におこった脱線事故は、自然災害に対して一層の安全対策が求められている。
一方、新幹線は高速鉄道の先がけとして世界各国に影響を与えてきた。今、仏独等ヨーロッパを中心に高速鉄道のネットワークが急速に拡大しつつある。
温暖化は鉄道にとっても国際的課題の地球環境問題。特にCO2削減への取組みと解決に向けて高速鉄道の役割が注目されている。
1964年東海道新幹線開業。1975年山陽新幹線、博多迄つながる。1982年東北・上越新幹線運行。
1990年代に入るとミニ新幹線が秋田・山形に乗り入れ、北陸新幹線は長野まで開通、そして2004年には九州新幹線が新八代―鹿児島中央間で運行を始めた。
現在、新幹線の総路線距離は2387km。延べ乗客数は70億人以上、世界の人口をゆうに上回る乗客を運んできた。
かつて東京―大阪間は蒸気機関車で8時間かかっていた。1958年運転開始の特急「こだま」は6時間30分。そして新幹線初期当時の初代「0系」は大幅に短縮し3時間10分となった。さらに「ひかり」型の最高速度は220Kから270Kとなった。
又、騒音振動対策はより軽量化を促し、一車体当たり60tから45tとなった。それらは直流モータから小型・軽量化の交流モータの開発によるものである。
素材は鉄からアルミ合金へと、更に車体構造見直しによる強度課題をクリアーした発想の転換があった。御存知の様に、新幹線は安全高速運航の為、信号が無く、追突事故を防ぎ自動的にブレーキをかけるATC自動列車制御装置がついている。
又、地震の揺れによる事故を防ぎ新幹線を早期に停める地震動早期検知警報システム(マレダス)があったが、上越新幹線はH16.10.23発生の新潟中越地震の震度7、直下型地震による対応はできなかったのは記憶に新しい。尚、新幹線にとって営業中の脱線は初めてのことであった。
1987年4月1日に国鉄は分割し、民営化され各社JRによる新幹線車体開発はそのスピードを増している。その陰で在来線の安全が御座成りとなり、H17.4.25発生の尼崎脱線事故等につながっているのではないか。新幹線の車体開発の歴史は1991年2月28日に「ひかり」に代わる300系「のぞみ」が最高速度325.7Kに達し、平均速度220Kから270Kとなった。99年に700系は軽量による省エネ・環境、乗り心地良く騒音を押えた車体となった。そして05年1月に公開された2007年営業予定のN700系は最高時速300Kとなっている。
一方、ヨーロッパではドイツで最高時速300Kを出すICEが1991年に開業。需要を伸ばしネットワークは拡大している。
フランスでは1981年に最高時速270KのTGVが開業。1994年にはパリ→ロンドン間に国際ユーロスターが運行を始めた。その路線は、ベルギー・イタリア、北欧に拡大している。アジアでは、04年韓国がソウル―釜山間KTXを開業。97年中国は鉄道網計画を発表した。そして、台湾では06年末に台北―高雄間345Kを90分で日本製新幹線が走る。
さて、今、地球規模の環境問題として最も深刻なのは温暖化である。大きな原因として二酸化炭素CO2の温室効果ガスの排出量削減することが早急な課題となっている。御承知の通り、97年京都議定書が採択され、決的規制されることになった。2012年迄にEUは8%、日本は6%削減目標値が定められた。対運輸交通対策として、エネルギー効率が良く削減できる可能性をもっていることで注目されるのが高速鉄道である。
例えば東海道新幹線は一日平均利用者が36万人で、1人1K運ぶエネルギーをCO2換算すると航空機の1/8 自動車の1/12となっている。この様に鉄道は対環境エネルギーとしても優位性をもっている。
環境先進国として評価の高いヨーロッパを見ると、ドイツICEは環境にやさしく競争力をアピールし、仏TGVは省エネ性は勿論のこと高速道路より土地が半分少なくてすみ、輸送能力がすぐれているとアピールしている。TGVの路線は1450Kに達している。
TGV高速鉄道ネットワークは1981年にパリ―リヨン間で始まり、ベルギー・オランダ迄伸ばしている。93年EUが発足したが、02年のEU白書はCO2(温室効果ガス)を2020年に50%削減するとしている。
現在、EU各国の電力、電圧、周波数は違うが、インターオペラビリティ(技術の規格統一)により鉄道を自国だけでなくEU各国どこでも走れることを目指している。
2020年迄にモスクワやイスタンブール迄1万K超えるネットワークが整備計画されている。そんな中、交通機関の役割分担の新しい考え方が生まれている。ドイツのフランクフルト空港では2001年にICEが乗り入れ鉄道と空との連携サービスが実施されている。かつて飛行機や自動車で結ばれた数百キロの中距離の都市間の交通をICEに任せ、海外や1000K超の長距離を飛行機に任せ、近距離は自動車と最適な交通機関の組み合わせが実施されてきている。鉄道と航空会社の連携で生まれた「エアレール」はルフトハンザ航空の1枚のチケットで国際線の飛行機からICEに連絡でき、空港に最初に預けた荷物は乗り継ぎでも荷物を出さずにすむバッケジスルーが導入され便利となっている。
鉄道と他の交通機関連携させる考え方として「インターモダリティ」があるが、これは効率の良い交通体系の再編に活かす様々な交通手段と連携するカーシェアリング(レンタカー制度)や、コールアバイク(自転車レンタル)等がある。競争から共生へのインターモダリティという考え方はヨーロッパで広く浸透しつつある。このように各々交通機関の長所を生かして役割分担することでトータルエネルギー効率が向上し、CO2削減に貢献できるのである。
一方、アジアの中国、インドにおける自動車問題は深刻である。中国は2015年に16億人の人口が見込まれ、2030年には、中国の車だけで10億tと予想されるCO2排出は世界の全機関と匹敵し、また高速道路や駐車場の大きな土地が必要とされている。その解決策として中国では高速鉄道が注目されているのである。
以上のごとく人、ものを運ぶ環境にやさしい交通システムをどのように構築し、どういう社会をつくっていくかは大きな問題となっている。日本は安心安全高速大量輸送可能な最先端技術である新幹線をどう使うか日本のみならず世界に提案できる力を持っている。更に21世紀、次世代の鉄道としてリニアモーターカーは581Kの最高速度を出し2000年に実用化のメドとして認められた。リニアは遠隔制御による自動運転で東京―大阪間わずか1時間で結ぶ夢の鉄道である。